top>gallery>Novel>Courage of only a word〜丘の樹の下で〜>
Courage of only a word〜丘の樹の下で〜

「ごめん・・・涼宮さん・・・俺君とは付き合えないよ・・・。」



「いやーーーーーーっっ!!・・・はぁはぁ。」

時計は午前5時47分を指している。

「またこの夢か・・・。」

最近見る夢はこればかりだ。
鳴海君の好きなあの丘の樹の下で告白している私・・・。
その話を真剣に聞いている鳴海くん・・・。
そしていつも鳴海君の答えは同じだ・・・。

「なんで最近こんな夢ばっかりみるの・・・?」

泣きながら一人でつぶやいてみる。何が変わるわけではないけれど・・・。
そして布団で涙を拭いてからベッドを降りる。
とてもこれから寝れそうな気分ではないのでとりあえずシャワーを浴びることにした。

階段を下りながら考える。
鳴海君のことはずっと好きだった・・・。
一年生のころからあこがれていて、ずっと影から見守ることしかできなかった。
そしてやっと水月のおかげで話したりできるようになったのに・・・・。
まだまだこれからなのに・・・。
どうして私はこんな夢をみてしまうの?
いままでこんなことは一度も無かったのに・・・。
これまで何度も頭の中で考えてみた。もし私が告白したら鳴海君はなんて答えてくれるのだろう?
なんども考えたけどどうしてもいい返事がもらえることは無い・・・。

「こんなこと思ってるからこんな夢をみるのかな・・・。
だめだな〜私・・・今日が一番大切な日だって言うのに・・・。
うわぁ、すごい顔になっちゃってる・・・私そんなに泣いていたのかな・・・。」

洗面所の鏡に映る目を真っ赤にした自分の顔にむかって問いかけてみる。
当然答えが帰ってくるはずも無いのだけれど・・・。

「・・・よし!シャキっとしなくちゃ!今日はとても大切な日なんだから!」

あえて言葉に出して自分を励ます。お風呂のなかで冷ためのシャワーを浴びながら気持ちを落ち着かせる。
だんだん覚醒してきた頭で今日のこれからやることを確かめてみた。

「まず水月におねがいして、鳴海君に丘に来てもらって・・・。」

なんとか気持ちが整理できたところでお風呂場から出る。
いつもより長いこと入ってしまってたみたい。6時15分を過ぎた時計に目をやりながら鏡を覗く。

「うん。いつも通りの顔にもどった。大丈夫、いつも通りに・・・ね?」

髪を拭き、ドライヤーで乾かしてから制服に袖を通す。
授業の準備も整えて鞄に入れ終わるころには、時計は6時45分といったところだった。

「今日は夢のせいでチョット早くおきちゃったなぁ。よし早めにいってあそこに行ってみよう。」

茜やお母さんに挨拶してから朝食を食べずにお弁当をもつ。
「どうしたの?」と聞かれたけれど曖昧に答えて家を出た。

さすがに7時前の通学路には殆ど白陵の制服は見られなかった。
通いなれたはずの静かな通学路を学校に向かって歩いていく・・・。
あれだけお風呂で落ち着かせたはずの頭がまただんだんほてっていくのが感じられた。

しばらくすると、鳴海君の家から続く道に合流して桜並木の坂に入っていく。
とっくの昔にさくらは散ってしまって、葉っぱが青々と茂っている。
「そういえば。この前鳴海君が桜並木の桜の下がどうのこうのいってたなぁ〜。
水月が怖い顔して黒板消し投げつけてたけどなんだったんだろう?でもあのときの鳴海君面白かったなぁ〜。」
誰もいない桜並木をクスクス笑いながら上っていく。
普段ならこんなことを考えるほど余裕はないのでとても新鮮だった。

校門を入ると、クラブの朝練の声がきこえてきた。きっと水月も一生懸命練習しているんだろう。
一瞬水月のところに行こうかとも思ったけれど、一生懸命練習しているのに水をさすのも悪いのでそのまま行くことにした。

更衣室の水月のロッカーの中にメモを入れて、校舎には入らずにそのまま裏に回りこむ。
「鳴海君を追いかけて初めてあそこに行ったときには、窓を乗り越えたけれど、私どんくさいからお尻打っちゃったし。
あそこ乗り越えるのは大変だしね。」

相変わらず不安なのは一緒なのに朝とは違った頭の火照り方だった。
あそこに近づいているからだろう。あれ以来私のお気に入りの場所でもあるのだ。
鳴海君がいるときはいけないけれど、たまに行っては絵本の中に飛び込んだような気分を味わっている。

「よいしょ。よいしょ。・・・」ちょっと急な坂を上っていくと大きな樹が見えてきた。
そのまま坂を樹のしたまで上っていく。
「うわぁ〜朝来るのと放課後来るのはぜんぜん違うね〜。」
朝特有のさわやかな風に小鳥の鳴き声も聞こえてくる。
「よいっしょっと。」いつも鳴海君が座っているところにハンカチを広げて座ってみる。
いつも鳴海君が見ている風景を共有できたと思うと思わず顔がゆるんでしまう。
「・・・ここに着てよかった。決心を固めることができた。こうでもしないと私逃げだしちゃうもの。」

しばらく丘から見える風景を眺めていた。



「遙ぁ〜〜〜!」学校のほうから水月の声が聞こえた。立ってみると息を切らしながら上ってくる水月の姿がある。

「もぉ〜勘弁してよ〜。朝練した私にまだ運動させたいわけ〜。この〜っ。」
笑いながら水月が抱きついてきた。
「ごめん水月〜。どうしてもここに着たくなっちゃって。」
「それで。わざわざ朝に待ち合わせなんて何か大切な話があるんでしょ?それに場所をココに変えるぐいだから。」
水月が体を離して聞いてくる。
私はもう一度絵本のような風景に目をやってから・・・。


「私・・・。鳴海くんに告白する。」




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
あとがき。

どうも管理人の初SSであります。しんさん主導で企画された
君が望む永遠 Special Fan Fan Diskに参加させていただいた作品です。
それに蝶子の挿絵を追加・修正しました〜。
誤字・脱字があったりしたら、BBSなどで指摘していただけるとうれしいです。
感想なども大歓迎です。へこむかもしれませんがorz

↓一言感想お願いします!
back