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スー・・・・・・スー・・・・・・。

静かな寝息が部屋に響いてる。

ピッ・・・・・・ピッ・・・・・・。
この音は彼女が生きている証。

もう3年になるだろうか。菫が突然不治の病と診断され病院に通うようになったのは。
自分が不治の病だと知っても、菫の態度は変わらなかった。
最初の1年は仕事をしながら夜病院にいく生活。
2年目は少しづつ仕事に支障が出始めたため、家でのんびりしたり旅行にって静養しながら生活していた。
3年目、ついに点滴が手放せなくなった。



寝ている菫の手を握る。小さくやせ細ってしまった手。
薬指にしているペアリングもサイズが合わなくなってしまい、布で上から抜けないように縛っている。
3年前からは信じられないくらい細く、小さくなってしまった。
両手で暖めるようにさすっていると、菫が目を覚ました。

「おはよう。秀君来てくれてたんだ。また仕事明けでしょ?疲れがたまってるんだから帰っていいよ?」

「病人が人の心配してんじゃねえっての。俺は大丈夫だから。今日だってバッチリ仕事中にねてきたからな。」

「んもう。それがダメだって言ってるの!そんな事じゃお仕事なくなっちゃうよ。」

菫は自分の時間がもう少しだというのに、こうやって人の心配ばかりしているのだ。


「俺ちょっとトイレに行ってくるな。」

「うん。いってらっしゃい。」


部屋を出るとき後ろを振り返ると菫は虚ろな目で窓の外を眺めていた。
彼女はあの目でいったい何を見ているのだろう。

まだ病気になる前、2人で語り合った将来の夢だろうか。
それともこれから自分が逝くところのことなのだろうか。
それともはじめてであったときの事だろうか。


部屋に戻ると菫は窓に向かって座っていた。

「なにか面白いものでも見えるのか?」

そういいながらに窓際の椅子に腰掛ける。



泣いていた。今まで病気になってから一度も俺の前で涙を流していなかった菫が泣いていた。

「ごめんね、秀君。私のせいで無駄な時間を使わせちゃって・・・・・・でもありがとう。
私にたくさんの思い出をくれて。一緒に行った夏の砂浜も、秋の高原もとっても楽しかった。」

「何いってんだ!無駄でも無いし、これからだってまだ思いでは作れるだろ。」

「ううん。さすがに鈍い私でも自分の体の事くらい解るよ。きっともう秀君にお礼を言う余裕は無いとおもうから。」

それから俺は何も返せなかった。
菫はニコッと笑うと、俺の頭をほとんど骨と皮だけになってしまった体で抱きしめてくれた。




「ねぇ。秀君は輪廻って信じる?」




それから1週間後に菫は逝った。

家族に見守られながら安らかに逝ったそうだ。俺は死に目には合えなかった。
仕事中だった俺を、絶対に呼ぶなと菫が言い張ったのだそうだ。
後でお母さんに何度も謝られたが俺もそれでよかったとおもっている。

菫の顔はとても穏やかだった。全く苦しんだ様子の無いくらい。

遺影の菫を見ていて、色々な思い出がフラッシュバックしてきた。まるで昔見た写真のように。
ついに耐えられなくなり涙があふれてくる。




「私たちはね、ずっと輪廻の上を歩いているだって。」


菫が最後に残した言葉。




「繰り返す時間輪をの中をず〜っとず〜っと歩いていく。それならいつか・・・・・・きっといつかまた会えるとおもわない?」


俺は菫の胸の中でうなずく事しかできなかった。
あの時も色々な思い出が頭をよぎり、菫の腕の中で泣いていたのだ。




「私は絶対秀君のこと忘れない。たとえ生まれ変わっても。」




もう一度菫の遺影を見上げる。
白い花畑のなかで微笑んでいる菫。


「そうだ・・・・・・。菫は歩いているのに、俺だけいつまでも立ち止まっていられないよな。」


そう・・・・・・俺たちは歩き続けていく。果ての無いたびを続けていく旅人のように。


いつか俺と菫の声が交わる日が来ることを信じて。

誰も知らない未来へと歩いていく。


Cross talk...



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公開するのは始めてだったりします。
曲のイメージSS。

書こうとおもったのはばあちゃんの病院でこの曲を聴いた時。
自分の中でこんな感じのイメージがぶわっと浮かんできたのです。
ちょっと走り書きな感が否めませんが^^;

上手く表現できてなさそうだなぁ。

↓一言感想お願いします!
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