二人の「私」
『おはよ〜^^ よく寝むれたかな?昨日はつき合わせちゃってごめんね。それじゃあ今日も一日お互いがんばろ〜♪』
毎朝日課のメールを送って、家をでる。あて先はメル友の<ケンくん>。隣の家に住む幼馴染の<坂崎 賢一><けんくん>で
もある。
なかなか本心をいえない私が、サブアドを使ってけんくんとメールしているのだ。けんくんは、<川村 明日未>=<ちょこ>
だとは気付いていない。私がそうなるように細心の注意を払っている。
「けんくん!! おはよ〜♪」
「おう、あす。おはよ〜さん。」
「今日は珍しく起きてるんだね〜。いつもなら私が起こすまで起きないのに。でもすごく眠そうだけど大丈夫?」
「おぅ、今日は寝てないからな〜。眠くてしょうがないわ〜」
ちょっとドキッとする。昨日はついメールが楽しくて、ケンくんをつき合わせてしまったから。まさか、あれから寝てない
なんて思わなかった……。
「大丈夫?眠いなら少し寝てから行けば?先生には私から適当に言っておくよ。」
「いいって。生徒会の仕事もしなきゃならないしな。俺が寝ているようなら、はたき起こしてくれや」
「うん……本当に大丈夫?」
「大丈夫、大丈夫。気にすんなって。急がないと間に合わなくなるぞ!ほらっ!!」
「は〜い」
いつもの道を少し早足で学校に向かった。私はこの時間が大好き。けんくんと学校まで二人きりになれる気がするから。
小学生のことからず〜っと一緒に生活してきたけれど、けんくんを意識するようになったのは高校に入ってからだった。高校に
入って、けんくんは生徒会の役員になった。会計の役員として会長を上手にサポートしている姿を見て、幼馴染の意外な一面を
発見したような気持ちになった。意識するようになったといっても、二人の関係や係わり合いに何の変化もなかったとおもう。
私も今まで通りの関係ですごくたのしかった。
けれど、「いつしか会長の<小松 彩>さんとけんくんは付き合っている」といううわさが流れ始めた。確かに生徒会の仕事で、
生徒会室に二人でいることは多いみたいだけれど……でも私にはそれを確かめる勇気がなかった。
学校について、携帯を見てみるとケンくんからメールが届いていた。
『おはよ〜。結局昨日あれから眠れなくてさ〜。 あ。でも全然ちょこさんのせいじゃないから。気にいないでね! それじゃ
今日も一日がんばっていきましょ〜!! 』
こんな他愛もないメールが楽しくてしょうがない。私はいつもこの二つで一日分の元気をチャージできる。なんて安い性格なん
だろう。思わず笑みがこぼれた。
『ホント!?でも遅くまでごめんなさい。眠くなったら寝てくれてもいいんだからね?』
『本当にきにしないで〜俺もちょこさんとメールするの楽しいしさ。ついつい夜更かししちゃうよね(汗) 授業つまらないよ〜』
「本当に授業はつまらないよね(笑)」なんて思いながらけんくんを見ると、けんくんは寝ちゃっていた。
今日もいつも通り、<ちょこ>として休み時間とか授業中にちょっぴりメールしたり、<明日未>として話しかけたりしている。
そうしているうちに、けんくんは生徒会へいってしまう。会長さんとは本当に付き合っているのだろうか……心配でしょうがない
けれど、怖くて聞けない私がいる。そして何もできずに一人で先に帰ることになるのだ。
「どおしたの明日?最近やたら暗いじゃないの〜カラオケでも行ってすとれす発散しない?」
帰ろうとしたところに親友夕貴が遊びに誘ってくれた。
「うん。いこっか。歌ってパァ〜と忘れちゃおう!! 」
「そうそう。それじゃあ駅前でいいよね? 」
それから二人で2時間くらいバカ騒ぎをして楽しんだ。
「はしゃいだね~。やっぱ夕貴ちゃん歌うまくてうらやましいなぁ〜。」
「そんなことないって。」
気にしていたこともすっきり忘れて、夕貴と別れたときお母さんからメールがきていた。
『賢一君車に轢かれたらしいわよ。●×病院らしいから早く行ってきなさい!』
おもわず携帯を落としそうになる。真っ青な顔をして立ち尽くしていると、夕貴が心配したのか声をかけてくれる。
「明日? どうした? 顔が真っ青だよ?」
「ゆ……夕貴ちゃん……どっ……どうしよう。」
「何があったの!! さっきのメール? 見せて見なさい!! 」
そういって夕貴は携帯をひったくる勢いで取ると、メールに目を通して一喝してくれた。
「なにぼぉーっとしているの!!早く病院に行ってきなさい。明日は坂崎君のこと好きなんでしょ!!!」
でも怖くて足が動かなかった。
「だって……もしけんくんが死んじゃってたら……私……私」
次の瞬間、頬が急に熱くなった。何が怒ったのか分からず、呆然としている。
「何馬鹿なこと言っているの!!そんなことあるわけないでしょ!! 今ここで行かなかったらいつ彼のところへ行くのよ!!」
泣き崩れそうな私のことを夕貴がひっぱたいてくれたのだ。
「……ヒック……ヒック……うん……分かった。いってくる。」
「詳しいことが分かったら後で連絡しなさい。私だって心配なんだから。」
そういうと夕貴は私のカバンを差し出して、背中を軽く押してくれた。次の瞬間には、今までに走ったことがないほどの速さで
病院まで走った。普段はあまり運動は得意なほうではないので、病院に つく頃には私が倒れそうになっていた。
受付を見つけて、看護婦さんに部屋の場所を聞くと病室まで駆け上がる。病室の前にたどり着いたところで、深呼吸をして息を
整えた。そのとき、中から話し声が聞こえてきた。
「本当にごめんなさい坂崎君。私のせいで……。」
会長さんの声だ。ノブに伸びかけた手を引いて、声に耳を傾ける。
「気にしないでください。俺が勝手にやっただけですから。」
「でも私がちゃんと確認していれば……」
「人間なんです。たまにはそういうこともありますよ。最近忙しかったですから。会長も疲れていたんじゃないですか?」
会長のすすり泣きが聞こえてきて、もうこの場にいたくないと思いながら、扉に耳をかたむける。
「いいえ……そんなことは……私……私……。」
「本当に大丈夫ですから。会長は帰って休んでください。」
「私……あなたのことが心配で帰れませんだって……」
もう限界だった。気がついたら、カバンも取らずに駆け出していた。家の近くの公園まできて、ベンチの上に倒れるように座り
込んだ。あんな場面に出くわして頭の中はグチャグチャ。どうしていいのかも分からず、しばらくそのままボーっとしていた。
ブーブーッブー。
突然携帯が震えだしてドキッとする。差出人はケンくんだった。
『あす。どうして帰った?とりあえず戻ってこい』
なんで……〈ちょこ〉が私だって知っているの?
わけが分からなくなって、取り乱しているとまたメールが来た。
『こないなら探しに行くからな! 怪我人に心配かけやがって』
とりあえず戻らなきゃと思い、病院に向かって歩き出す。
あんなに必死にばれないようにしてきた。
今朝までいつも通りだった。
なんで……なんで……。
怒っているかな?軽蔑しているよね。
もう何も考えたくない!
そこでちょうど病院に着いた。もう人気のなくなった病院に入り、けんくんの病室に向かう。ドアノブを握る手が震える。
やっぱり引き返そうという思いを何とか押さえ込んで、ドアを開けようとしたとき。内側からドアが開いた。
「あんな勢いで飛び出していって!! 心配かけんなバカ!! 」
いきなり抱き寄せられて思考が停止する。
「まったく。」
しばらくしてやっと声をしぼりだした。
「気付いて……いたの?」
「こんな薄い扉なんだから、外に人がいればわかるっての。まぁ会長は気付いてなかったみたいだけどな。」
「知って……いたの?」
「最初は気付かなかったさ。でもな、〈ちょこ〉さんが寝た瞬間に、あすの部屋の電気が消えたことがあった。授業中に隣で
メールしてたりすりゃ誰だって気付くっての」
「……怒ってないの?」
「おこりゃしないが、なんでこんな回りくどいことをやったのかがわからないな。」
「なんで気付かない振りしていたの?」
「言ったら、あすはどういう行動をとった?自分のことだから分かるだろ?それに、〈ちょこ〉さんとのメールも楽しかったしな。」
「会長さんと付き合ってるんじゃなかったの……?」
「あんなうわさ信じてたいのか。んなことあるわけねぇだろうに。さっき告白されて断ったとこだよ。」
「私うそつきだよ?」
「いままで世話になってきたんだ。その程度のうそがどうした。」
私の質問攻めに全て優しく答えてくれた。そこでついに涙腺が決壊してしまう。
「ごめんなさい……ごめんなさい。」
子一時間泣いていただろうか。その間もずっとけんくんは私を抱きしめていてくれた。
「私……けんくんが好き。会長と一緒にいるの見ていて耐えられなかった。」
「ごめんな。俺もあすのこと好きだよ。今までそういったそぶり見せても全部スルーされてきたから言えなかったよ。」
「え?いつの話?」
「中学の頃とか何度も2人遊びにいっただろ?」
確かに水族館にいったり、公園にバドミントンしにいったりはした。でもあの頃は二人であそぶのがふつうだったから……。
「ごめんなさい。あの頃はまだなにも意識してなくて……。」
「気にすんな。昔から一緒に遊びに逝くのは普通だったんだから。」
ふと大事なことを忘れているのに気がついた。
「ッ。そうだけんくん怪我は大丈夫なの??!!」
「なんだ、いまさら。たいしたことないよ。車にはねられたっていったって、怪我は足の捻挫ぐらいだしな。大事をとって一晩
入院なだけだよ。」
「よかった〜。でもなんで車になんか……」
「会長が寝不足で道でふらついてな。助けようとしたら轢かれた。」
「それでさっき会長さんあんなだったのね。」
「誰かさんが勘違いして出て行くほどな。そろそろ遅いから帰れ。また明日な。」
そういって笑顔でカバンを差し出してくれる。
「うん。またね!」
そして、きたときとは比べ物にならないほど元気に部屋を出た。
帰り道。またケンくんからメールがきた。
『守りたい子ができました。もう、ちょこさんにお世話になることもないと思います。いままで本当にありがとう。』
おもわず笑みがこぼれる。
『私とメールしてると、彼女がすねちゃうもんね。大切にしてあげてください♪さようなら^^』
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書き上げたのはいつだったっけな。割と前ですw
mixiで唐突に短編書きます!と宣言したその日に1時間くらいでかいたやつw
その後いろいろ手直ししたりしましたが。
やっぱり自分の文才のなさと、発想力のなさに凹むは〜(´・ω・`)
06.12.06
イロイロ修正しました。なんつうか酷い。その一言に尽きますorz
↓一言感想お願いします!
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